フリーランスや個人事業主で、仕訳帳を作成する際に経費の勘定科目で悩んだことはないでしょうか。
事業に必要となる経費には上限は設けられておらず、様々な勘定科目において計上する経費は、フリーランスや個人事業主の所得税を計算するために必要不可欠なものとなります。
しかしフリーランスや個人事業主として、どこまで必要経費として計上できるのかを知らなければ、正確な確定申告ができず大きな損をしてしまう場合があります。
今回は、フリーランスや個人事業主において、どこまで必要経費にできるのか勘定科目についても一覧で解説しています。
- フリーランスや個人事業主が使える経費を詳しく知りたい人
- 経費の仕分けで、どの勘定科目に当てはまるかわからない人
- 青色申告における経費の使い方について、特例があることを知らない人
フリーランスや個人事業主にとって領収書を保管し経費として計上することが節税に対する方法の1つですが、青色申告の申請を行うことで経費の特例を受けることも、節税対策の大きなポイントとなります。
この記事を読むことで、フリーランスや個人事業主の人は、経費の勘定科目を知ることで節税効果があがり、青色申告における経費の特例を活用することでさらに節税することができるようになります。
ぜひ最後までご覧いただき、これからの事業運営に役立てて欲しいと思います。
フリーランスや個人事業主はなぜ経費が必要?
フリーランスや個人事業主は、1年間の収入だけでなく必要経費を把握することで、所得税を計算する確定申告において節税することが可能となります。
しかし、どんなものでも経費に計上できるわけではなく、プライベートの支出と分別しておくことが大切です。
フリーランスでこれから個人事業主として起業したいと考えているなら、起業準備の費用も後々経費として計上することができる場合もあるので、ぜひ確認しておいてください。
所得税を計算するために必要な経費
フリーランスや個人事業主になったら、毎年2月中旬から3月中旬に所得税を決めるために確定申告をしなければなりません。
確定申告では必要経費を使って事業所得を求め、そこから算出された課税される事業所得に対して所得税が決まります。
- 総収入-必要経費=事業所得
- 事業所得-所得控除=課税される事業所得
フリーランスや個人事業主になったら『領収書をもらうこと』には、こうした必要経費を把握し、必要に応じて仕訳帳などを作成する必要があるのです。
個人事業主と同様、フリーランスの人も納税しなければならず、支払う税金のなかでも大きなウエイトを占める所得税については、関連記事を参考にしてみてください。
必要経費として計上しても良いのか悩んだときには、2つのポイントを基準に判断してください。
- 事業に関係していることにお金を使っている
- 使ったお金が事業に貢献している
もしも税務署から調査が入ることになったとしても、領収書などの保管だけでなく事業に必要となった経費である根拠を説明できるようしておくことが大切です。
開業や起業前の出費も必要経費に計上できる
フリーランスや個人事業主として、開業や起業する準備期間にも事業に対する出費があるはずです。
準備期間に発生した費用は開業準備費として経費に計上することができ、準備期間は1年程度として経費の処理を行うことができます。
開業準備費に対する期間は決められていません。
開業や起業準備に対する経費は、1つ1つが大きな出費にはならないかもしれませんが、合計すると大きな出費となってしまいますので、開業準備費として計上するためにも必ず領収書は保管しておきましょう。
個人事業主として起業する予定があるなら、関連記事を参考に準備をすすめてみてください。
フリーランスや個人事業主が使える経費の種類一覧
フリーランスや個人事業主が使える経費に上限はありませんが、それぞれを経費として計上し仕分けをする際の勘定科目については、間違いのないように注意しておく必要があります。
必ずしも紹介している勘定科目だけしか使えないというわけではなく、必要に応じて勘定科目を追加して作ることも可能です。
ただし、一度その勘定科目で計上した場合、翌年以降も同じ勘定科目で計上しなければならないので、勘定科目の新設には注意するようにしておいてください。
≪税金などの公的支払い≫租税公課
税金や手数料など支払った費用を経費として計上するための勘定科目になります。
- 個人事業税
- 固定資産税
- 償却資産税
- 収入印紙税
- 不動産取得税
- 自動車取得税
- 登録免許税
- パスポート交付手数料
- 謄本手数料
- 住民票発行手数料
- 印鑑証明手数料
フリーランスや個人事業主個人に納税義務が発生する所得税や住民税などは事業費から支払うことはできないので、租税公課として経費に計上することはできません。
また、延滞金や加算金など税金に対する罰則的な費用は法人であれば租税公課して計上することができますが、フリーランスや個人事業主の場合は事業主貸として処理することになります。
フリーランスや個人事業主が事業とは関係のない費用(生活費など)を個人的に使用した場合の処理を事業主貸といいます。
≪荷物や運賃≫荷造運賃
商品などを取引先へ届けるために必要となったトラックの運送費用や航空貨物の運賃を計上するための勘定科目です。
荷造りの際に使ったものも荷造運賃の勘定科目に計上することができます。
- 運送会社や航空会社への支払い
- 宅急便やバイク便
- 倉庫費用
- 段ボール箱
- ひもやガムテープ
- エアクッションや発泡スチロール
- 荷物札
荷造運賃に計上できるものは、運賃が発生するものが商品などの『物』である場合ですので、通信費との違いに気をつけておいてください。
商品などを発送する場合が荷造運賃、書類を発送するときは通信費です。
ネット販売を事業としている場合、商品と送料を合わせて請求するなら『売上高』として計上することになります。
≪事業運営の光熱費≫水道光熱費
事業を営む場所で支払った水道代や電気代などを計上する勘定科目です。
- 電気代
- ガス代
- 水道代
- 灯油費用
- 冷暖房費
自宅を事務所として個人事業をしているなら、時間または面積で事業用とプライベート用に家事按分することができます。
面積比や時間割合は根拠のある数字で計算しましょう。
たとえば、自宅を事業所として使用している面積の割合が3割だった場合、口座から光熱費6万円が引き落としされると次のような仕分けが必要となります。
貸方 | 借方 | ||
---|---|---|---|
水道光熱費 | 18,000円 | 普通預金 | 60,000円 |
事業主貸 | 42,000円 |
プライベートで使用した光熱費は、事業主貸として処理することが必要です。
≪移動や宿泊≫旅費交通費
事業に必要な移動で公共交通機関の利用や宿泊などの旅費などを計上する勘定科目です。
- 通勤費
- 定期代
- 通勤代や通勤手当
- 通勤や移動に使う電子マネーのチャージ
- 移動時に必要となった駐車場代
- 出張時の旅費や宿泊費、食事代
公共交通機関などで領収書が発行されない場合には、旅費交通費に対して金額をまとめて書類にしておくことが必要です。
- 旅費交通費が発生した日付
- 移動した目的
- どこへ行ったか
- 各交通費ごとの明細金額
旅費交通費で間違いやすいのは、接待相手にタクシー代を支払うときと、接待に行くために個人事業主が利用した交通費の違いです。
接待相手のタクシー代は接待交通費、個人事業主の交通費が旅費交通費となるので、注意しておいてくださいね。
≪電話やインターネット≫通信費
電話やインターネット、郵便代などを計上する勘定科目です。
- 固定電話や携帯電話の費用
- 切手やはがき
- 書類の郵送費用
- インターネットのプロパイダー使用料
- サーバやドメインの使用料
個人事業主の場合、1台の携帯でプライベートと事業の両方を兼用しているなら、事業用の割合を求め家事按分した計上を忘れないようにしておいてください。
切手やはがきを一度にまとめて購入した場合、全額経費として計上できますが、未使用分があれば期末時に貯蔵品として分類しましょう。
≪事業や商品を宣伝≫広告宣伝費
事業内容や販売する商品などを宣伝するときに必要となった費用を計上する勘定科目です。
- チラシや広告、ポスターの作成
- 社名入りのテッシュやカレンダー作成
- 看板
- テレビ・ラジオ・インターネットにおける宣伝広告
不特定多数の人に対する宣伝効果のある費用と覚えておいてください。
名刺も宣伝アイテムの1つですが、配布によりなくなっていくものなので消耗品となるので注意しておきましょう。
≪接待や贈答≫接待交際費
事業を行っていく上で必要となる取引相手との外食などに必要となる費用を計上する勘定科目です。
- 外食費
- お土産の費用
- 送迎にかかる費用
- ゴルフ場などの利用料
- お中元やお歳暮
- 慶弔費
- 会費
≪自動車や火災保険≫損害保険料
事業を運営していく上で万が一に備えて損害保険に加入した場合に発生する費用を計上する勘定科目です。
- 生命保険や傷害保険
- 自動車保険や火災保険
- 運送中の賠償などに対する保険料
- 経営セーフティ共済保険料
個人事業主で自宅を事務所にしている場合は火災保険料、プライベートの車を事業でも使用している場合は自動車保険料が家事按分の対象となります。
≪建物や機械の修理≫修繕費
事業を運営するために必要な固定資産の修復や現状維持のために必要となった費用を計上する勘定科目です。
- 維持管理
- メンテナンス
- 壁の塗り替えや解体
- 現状回復
- 故障修理
固定資産の価値を高めるためや、耐用年数を伸ばすための資本的支出の場合は減価償却費として計上します。
20万円以下で修繕や修理が必要となった場合に、支払った費用が修繕費として計上されることになるので、混同しないように注意しておいてください。
≪10万円以下または1年未満の消耗品≫消耗品費
10万円未満または耐用年数が1年未満のものを購入した費用を計上する勘定科目です。
- 机や椅子
- 本棚
- コップなどの食器類
- 電球や文房具
- 名刺
- 10万円未満のパソコン
- 10万円未満のソフトウェア
- 10万円未満のプリンター
10万円以下という条件には、1個単位の場合と1セットの場合あります。
たとえば応接セットであればテーブルとソファーはセットになるため1セットで10万円以下のものが対象となり、事務作業で必要な机と椅子は、それぞれ単体で10万円以下かどうかの判断となります。
≪10万円かつ1年以上の使用で分割計上≫減価償却費
購入費用が10万円以上となり高額で1年以上使用することになり、少しずつ経費として計上する場合の費用を計上する勘定科目です。
- 10万円以上の資産に対する減価償却
- 建物に対する減価償却
- 機械や工具などに対する減価償却
- 10万円以上のソフトウェアの原価償却
減価償却の方法には、毎年同じ費用を減価償却する『定額法』と、毎年の資産価値に対して一定の割合を乗じて減価償却する『定率法』の2つがあります。
フリーランスや個人事業主が利用できる減価償却方法は、原則として定額法となっていますが、初年度の税金負担を軽減することができる低率法を適用するなら税務署に『減価償却資産の償却方法の届出書』を提出しなければなりません。
≪従業員に対する費用≫複利厚生費
従業員を雇用した場合の意欲向上や、働き手を確保するために必要とする費用を計上するための勘定科目です。
- 親睦会費
- 会社契約のスポーツジム会員費
- 教育費用
- 社内旅行費
- 忘・新年会、歓・送別会の費用
- 従業員への冠婚葬祭の一時金
従業員に対して食事を提供する際には、一定の条件を満たす場合には福利厚生費として計上することが可能になります。
≪従業員に対する給与≫給料賃金
従業員を雇用し給与を支払った場合に支出した費用を計上するための勘定科目です。
- 給与
- 時間外、休日手当
- 住宅、家族手当
- 現物支給
借方の勘定科目『給与』に対し、貸方には『所得税』や『社会保険料』として仕分けすることになるので、忘れないでくださいね。
≪外部へ業務委託≫外注工費
外部に仕事を発注した際に支払った費用を計上するための勘定科目になります。
- ホームページyた名刺の制作費
- 電気工事費
≪利息や手数料≫利子割引料
事業に必要な借入をした場合に発生する利息などを計上するための勘定科目です。
- 返済に対する支払利息
- 自動車や住宅ローンの利子
- 手形における割引料
≪家賃≫地代家賃
事務所や店舗、駐車場など賃料が発生する場合に計上するための勘定科目です。
- 事務所や店舗を借りている場合の家賃
- 駐車場を借りている場合の家賃
個人事業主で自宅と事務所を併用している場合は、家事按分し借方に事業主貸とともに計上するようにしてください。
≪未回収の損害≫貸倒金
取引先の倒産や経営悪化に伴い、回収できずに損害を被った場合の費用を計上するための勘定科目です。
≪家族従業員≫専従者給与
家族が従業員として働き給与を支払っている場合、個人事業主が青色申告をしていれば働いている家族は専従者として支払った給与を経費にできる勘定科目です。
≪どれにも当てはまらない≫雑費
どの勘定科目にも当てはまらない少額の経費を計上するための勘定科目です。
勘定科目がわからないものも雑費でいい?
雑費の比率が高すぎるのは良くありません!
雑費に計上している経費のなかで、頻繁に雑費に計上しているものがあれば、新しく勘定科目を作って計上することをおすすめします。
青色申告における特例を利用した節税方法
個人事業主として起業する際に青色申告の申請をおこなう人は多いですが、フリーランスは白色申告をしている人の割合が高い傾向にあります。
青色申告を選択することで特例を活かして節税することが可能な場合もありますので、ぜひ節税の参考にしてみてください。
青色事業専従者給与の特例
生計を一にする配偶者や15歳以上の親族に支払った給与が労働の対価として適正であれば、給与を全額経費として計上することができる特例です。
事業専従者を雇用してから2ヶ月以内に、個人事業主は『青色専従者給与に関する届出・変更届出書』を税務署へ提出する必要があるので忘れずに届出をおこなってください。
青色申告をする個人事業主のもとで親族が働く場合、配偶者控除や扶養控除を受けることはできなくなるので注意が必要です。
- 青色申告をする個人事業主と生計を一にする配偶者や親族
- その年の12月31日時点で満15歳以上であること
- その年の1年間を通じて6ヶ月以上、青色申告をする個人事業主が行う事業に従事している
給与を経費に計上できるからといって、青色専従者に対して対価以上の給与を支払うことは認められていないため、社会通念上、妥当な給与を支払ったうえで経費に計上して節税に努めてくださいね。
2年間延長された少額減価償却資産の特例
価格が10万円以上となるものに対しては、原則として減価償却による経費の計上が必要となります。
個人事業主は青色申告をすることによって、少額減価償却資産の特例を活用することができるので、30万円未満のものであれば1年間で合計300万円まで一括して経費に計上することができます。
本来であれば2022年3月31日までしか適用されない特例でしたが、2年間の延長が決まっています。
ただし、1点だけ改正点があります!
延長とともに改正点が決定し、個人事業主が一括して経費に計上できる資産のなかから、貸付の用に供した資産を除外されることになりました。
ドローンや建築現場の足場など、1つ1つは10万円以下の少額経費ですが大量に取得するとともに経費を一括計上し、その資産は他社へ貸し出すという不正な節税方法に対する対策だといわれています。
正しい節税に対する少額減価償却資産の特例は、個人事業主にとって有利な節税になりますので、ぜひ活用するようにしてくださいね。
個人事業主が自宅を事務所にしている場合の家事按分
フリーランスや個人事業主のなかには、賃貸の自宅や持ち家の自宅を事務所変わりに使っているひとも多くいますが、白色申告の場合は事業として使用している割合が50%以上、または明確な区分が可能なものでなければ家事按分することができません。
青色申告の場合、業務に必要であることを合理的に考えることができる場合は、割合にとらわれることなく家事按分をすることができます。
自宅を事務所として使用する際には、家賃や光熱費など様々な経費を家事按分することができるので、ポイントを押さえておき忘れずに経費に計上するようにしてください。
- 水道・光熱費
- 携帯代
- インターネット代
- 自動車の燃料代
- 自動車の車検代など
自宅が賃貸の場合は家賃を家事按分することができますが、持ち家を家事按分する際には住宅ローンを家事按分することはできません。
持ち家の場合は、建物の減価償却費、住宅ローンに対する利息、固定資産税、火災保険料を家事按分することができますが、事業スペースが半分以上になってしまうと住宅ローン控除が利用できなくなってしまうので、注意してくださいね。
まとめ
フリーランスや個人事業主が事業を行ううえで支払った費用は、それぞれの勘定科目に分類して経費として計上でき、経費の金額に上限はありません。
節税に必要となる経費は、種類ごとに勘定科目へ分類して経理処理しなければならず、勘定科目の内容は毎年同じでなければなりません。
雑費に分類される経費が多いのであれば、新たな勘定科目を設定し分類することで、雑費に割り当てられる経費を少なくすることができます。
フリーランスや個人事業主は、必要な経費はすべて勘定科目として計上するだけでなく、青色申告の特例などを利用した節税を心掛けることも大切です。